人の名前と顔を覚える方法
名前を覚えるには、まず名前をしっかり受け取ります。よく聞き、くり返し、一度使ってみます。次に顔と結びつけます。目立つ特徴を1つ選び、名前を音の似た具体的なイメージに変えて、そのイメージを特徴の上に思い描きます。その日のうちにもう一度、さらに数日後にも名前を思い出しましょう。
§ 1名前がすぐ抜けてしまう理由
名前が覚えにくい理由は単純で、名前には必然性がないからです。顔を見ても、その人が「ゆい」さんなのか「みお」さんなのかはわかりません。しかも紹介された瞬間、注意はたいてい会話のほうに向いていて、名前には向いていません。忘れた名前の多くは、そもそもきちんと記憶されていなかったのです。
対策は、名前に意味を与え、その人について次に会ったときにも目に入るものに貼りつけることです。記憶の宮殿と同じ原理です。必然性のない項目も、イメージに変えて手がかりに結びつければ覚えやすくなります。
§ 2顔と名前を結びつける方法
この古典的な技法には3つの要素があります。McCarty(1980)は、3つすべてがそろって初めて効果が出ることを示しました。
- 目立つ特徴。顔を見て、際立っているものを1つ選びます。広いおでこ、丸いメガネ、太い眉。
- 名前の具体的な代わり。名前を、音が似ているか意味のある、思い浮かべられるものに変えます。「佐藤」さんなら砂糖。「さくら」さんは、そのまま花です。
- 2つを結ぶイメージ。代わりのものが特徴の上で何かをしている様子を思い描きます。広いおでこに砂糖が山盛りになり、さらさらとこぼれ落ちている。
McCarty はまた、特徴は、覚えようとしている顔のなかで目立つほど良い手がかりになることも示しました。黒髪の人ばかりの部屋での黒髪のように、多くの人に共通する特徴は弱い手がかりです。
§ 3人と会った瞬間の手順
- あわてずに耳を傾けます。聞き取れなかったら、もう一度たずねましょう。あとで聞くより今のほうが簡単です。
- 口に出して返します。「はじめまして、高橋さん」。めずらしい名前なら、どんな字を書くかたずねます。
- 話しながら、顔の特徴を1つ選びます。
- イメージをつくります。高橋さんなら、あごひげの上に高い橋が架かっている。
- 別れる前にもう一度名前を使い、数分後に顔と名前を思い出します。
- あとで、名前と会った場所を書き留めます。短いメモがあれば、復習できます。
§ 4大勢の名前を覚える
大勢のときは、一人ひとりに場所も与えます。頭の中の部屋に全員を座らせるか、出会った順に、宮殿の場所へ一人ずつイメージを置きます。休憩中に一度、最後にもう一度リストをたどりましょう。また会うチームやクラスなら、翌日と数日後に名前を思い出します。間隔をあけた復習が、今夜だけ覚えている名前と、来月も覚えている名前の差になります。
§ 5実践のコツ
- 大きなイベントで全員の名前を覚えようとしないこと。また会う人を選びましょう。
- もともと意味のある名前は簡単です。森さん、さくらさん、ひかりさん。その意味をそのまま使います。
- 知らない言語の名前は、自分の耳に聞こえる音を使います。イメージはほかの誰にも見えません。
- イメージは自分だけのものにし、やさしいものにしましょう。評価ではなく、記憶のための道具です。
- 忘れたら素直にそう言って、もう一度たずねます。良いイメージで覚え直すと、2回目はよく残ります。
§ 6名前を長く覚えておく
パーティーでしっかり覚えた名前も、一度も思い出さなければ1か月後には消えていることがあります。どんな記憶も、名前も含めて、時間をあけて思い出すことで保たれます。Cepedaら(2006)による分散学習の大規模なレビューでは、同じ学習量でも時間をあけて分けたほうが、一度にまとめるより記憶に残ることが示されました。名前でいえば、1日後、数日後、数週間後に顔と名前を思い出すということです。
よくある質問
名前を一瞬で覚えるコツはありますか?
注意を向けずに効く方法はありません。もっとも速く確実な手順は、名前をくり返し、目立つ特徴を1つ選び、そこに名前のイメージを思い描くことです。これを最初の1分のうちに行います。
名前からイメージが浮かばないときは?
音に分けて、近い言葉を何でも使います。「コワルスキー」なら「怖いスキー」。イメージは完璧でなくてかまいません。音を呼び戻せれば十分です。
写真でしか見たことのない顔にも使えますか?
使えます。この方法に必要なのは顔と名前で、実際に会うことではありません。写真で練習すると、すばやくできるようになります。
名前を何か月も覚えておくには?
間隔を少しずつ広げて思い出します。翌日、数日後、数週間後。間隔をあけた想起は、ほかの記憶と同じように名前も保ってくれます。