スピーチやプレゼンを暗記する方法
一言一句ではなく、構成を覚えます。要点ごとにキーアイデアを1つにしぼり、それぞれをイメージにして、よく知っている道順の場所に1つずつ置きます。練習では道順をたどりながら、何も見ずに話します。一字一句覚えるのは最初と最後の文だけにして、練習は数日に分けましょう。
§ 1原稿ではなく、考えの順番を覚える
スピーチを一字一句暗唱するのは、覚えるのに時間がかかるうえにもろい方法です。1つの文が飛ぶと、次の文もいっしょに飛びかねません。メモなしで話しているように見える人は、たいてい考えの順番を覚えていて、言葉はその場で見つけています。記憶の宮殿を有名にしたローマの弁論家たちも同じでした。クインティリアヌスは、スピーチの各部分の目印を家の部屋に置く方法を書いています。海軍についての論点には錨、戦争についての論点には武器を置き、話しながら家の中を歩くのです。
クインティリアヌスは、長い文章を正確な言葉どおりに覚えるには、イメージはあまり役に立たないとも注意しています。スピーチにとっては、これは欠点ではなく長所です。必要なのは、次に何が来るかを知り、それを自然に話すことだからです。
§ 2原稿から本番までの7つの手順
- 原稿を書き、各パートを数語のキーアイデア1つにまとめます。
- キーアイデアごとに1か所ずつ場所のある道順を選びます。なじみのある建物、通勤路、自宅など。
- キーアイデアをそれぞれ具体的なイメージにして、その場所に置きます。締め切りに遅れた話なら、机の上の壊れた時計。
- 頭の中で道順を歩き、各要点を自分の言葉で声に出して話します。
- 最初と最後の文は一字一句覚えます。緊張がいちばん強く、言葉選びがいちばん大切なところです。
- 原稿を読み返す代わりに、何も見ずに練習します。話す、抜けたところを確かめる、また話す。
- 練習は数日に分け、最後の通し練習は本番の1時間前だけでなく、前日に行います。
§ 3何も見ずに練習すると効く理由
原稿を読み返すと勉強した気になりますが、記憶を強くするのは思い出すことです。Roediger と Karpicke(2006)の研究では、文章を1回読んでから3回思い出す練習をした学生は、1週間後に内容の61%を覚えていました。4回読んだ学生は40%で、しかも自信はこちらのほうがありました。スピーチも同じです。何も見ずに練習するたびにそれがテストになり、次の練習を楽にします。
間隔も大切です。Cepedaら(2006)がレビューした数百の実験では、時間をあけて分けた練習が、同じ量を一度に詰め込んだ練習を上回りました。来週のスピーチなら、前の晩に1回長く練習するより、別々の日に短い練習を3、4回するほうが効果があります。
§ 4スライド、メモ、そして宮殿
スライドは順番を代わりに覚えてくれますが、読み上げたくなる誘惑もあります。宮殿があれば、順番を頭に置いたまま聴衆のほうを見ていられます。スライドを使うなら、1枚1枚を1つの場所として扱いましょう。各スライドのキーイメージを思い描き、画面を見ずに次のスライドへ移る練習をします。キーアイデアを書いた小さなカードをポケットに入れておくのは賢い保険で、それがあると知っているだけで、使う必要は少なくなります。
§ 5本番の日
- 朝に一度、前向きにだけ、急がずに道順を歩きます。
- 頭が真っ白になったら、ひとつ前の場所に戻ってもう一度前へ歩きます。次のイメージはたいていすぐそこにあります。
- 冗談やエピソードを一字一句覚えないこと。それぞれを1つのイメージとして置き、話して聞かせます。
- まちがえられない数字や名前はカードに書いておくか、メジャー・システムで符号化します。
よくある質問
スピーチは一字一句覚えるべきですか?
たいていは不要です。構成とキーアイデアを覚え、自分の言葉で話しましょう。一字一句覚えるのは、出だし、締めくくり、引用のように言い回しが大切な文だけで十分です。
スピーチには場所がいくつ必要ですか?
キーアイデア1つにつき1か所です。たいていのスピーチの主な要点は数個なので、部屋1つか短い道順で足りることがほとんどです。
話している途中で要点を忘れたら?
少し間をとり、頭の中でひとつ前の場所に戻って、もう一度前へ歩きます。それでもだめなら、キーアイデアを書いたカードにちらりと目をやりましょう。
試験や仕事のプレゼンにも使えますか?
使えます。論述問題の答えの構成、プロセスの各段階、会議の議題など、順番がはっきりした内容なら同じ手順が使えます。